口腔癌の標準治療・低侵襲治療・先進治療
口腔癌(舌がん・歯肉がん・頬粘膜がん・口底がん・上顎がん)の標準治療
・口腔癌の標準治療
・米国国立癌研究所(National Cancer Institution)の口腔癌標準治療
舌がん・歯肉がん・頬粘膜がん・口底がん・上顎がんの標準治療
口腔の食べる、飲む、話すなどの機能を温存しながら病気を完全に治療することがゴールとなります。昭和大学口腔外科は、全国的に有数の症例数、医療水準を誇っています。
特に口腔がんの治療では、放射線科、形成外科、耳鼻科、さらには内科・外科など他科との強力な連携のもとチーム医療を行い、現在に至るまで数多くの治療実績があります。チームアプローチにより、年齢・全身状態・職業などを考慮しながら最適な治療法を検討し、ご本人と相談し最終的に決定してゆきます。
口腔癌は適切な治療により治る癌です。National Cancer Institution(米国国立癌研究所)がインターネット上で提供する口腔癌の標準治療では、初期癌(頸部のリンパ節に転移のない進行度I-II期)なら手術単独療法や放射線単独療法により、90%以上の治癒が見込めます。一方、癌が進行したいわゆる進行癌(III-IV期)では、早期癌のようなの高い生存率は見込めないのが現状です。そのため手術の単独療法ではなく、手術と術後放射線療法が現在の世界の標準治療とされています。この場合に、放射線療法は術前より術後に行ったほうが、より治療効果が強いことが示されています(Amdur RJ et al., Int J Radiat Oncol Biol Phys 1989.)今世紀に入ってから新しい抗癌剤の併用が試されていますが、まだ明確な結果は確立しておりません。
手術不可能あるいは手術により高度に口腔機能を損なわれことが予想される高度に進行した症例には、放射線治療と抗がん剤による化学療法を同時期に行う方法が、標準治療として位置づけられています。この放射線治療と抗がん剤による化学療法を同時期に行う方法は8%ではありますが、生存率が上がることが報告されています(Pignon JP, et al., Lancet 2000)。本療法は合併症もあり、治療後、話すことや飲み込むことに障害が出る可能性が高く、高度進行がん以外の症例には標準治療として推奨はされていません。
National Cancer Institution : 米国国立癌研究所・口腔癌の治療
http://www.cancer.gov/cancertopics/types/oral
附記:口腔癌の治療と副作用・後遺症
舌癌の治療は、主に手術療法と放射線治療であり、抗がん剤による化学療法もこれらの治療との組み合わせで行われることがあります。
A.手術
手術で切除しなければならない範囲は、癌の大きさ・深さと位置によって決められ、それによって術後の後遺症(飲めない、話せない、食べれない)は大きく異なります。再建手術とリハビリテーションにより、後遺症も最小限に抑えることが可能です。
B.放射線治療
体の外から放射線を当てる治療ですが、単独で、口腔癌が完全に治ることはほとんどなく、手術との組み合わせで行われます。副作用を最小限に抑えるため、1日1回の照射を25~30回前後に分割して治療いします。1回の照射に要する時間は数分です。治療期間は約1ヶ月半かかりますが、外来通院治療も可能です。
副作用は、照射野(放射線の当たる範囲)により異なりますが、口内炎や味覚障害、口腔乾燥を生じます。
口腔癌(舌がん・歯肉がん・頬粘膜がん・口底がん・上顎がん)の低侵襲治療
・センチネルリンパ節を用いた低侵襲な口腔癌の治療
・温熱処理自家骨による低侵襲な口腔癌治療
・傷口の目立たない切開、筋を残し、術後の首の変形を最小限とする低侵襲治療
センチネルリンパ節を用いた低侵襲な口腔癌の治療
口腔癌を制御するのに最も大切なことは頸部リンパ節転移の制御です。頸部リンパ節転移の制御には頸部郭清術という手術が一般的には実施されます。 では、どのようにして頸部のリンパ節に転移があるかどうかを見るのかというと,CTなどの画像検査になります。
しかし、CTなどの画像診断で、明らかな頸部リンパ節転移がない場合でも、約30%に後発転移(後から首のリンパ節が腫れてきて、がんの転移とわかること)が出現します。
昭和大学歯科病院口腔外科では、センチネルリンパ節生検の口腔癌への応用を行っています。個々の口腔癌で転移部位は異なります。センチネルリンパ節生検は、先述した約30%の画像では見つけることのできない微小なリンパ節転移を診断するための有効な方法です。
腫瘍から直接のリンパ流を受けるリンパ節を見張りリンパ節(Sentinelnode;SN)とよびます。この、センチネルリンパ節を数センチの切開で取り出し、転移があるかどうかを調べる検査がセンチネルリンパ節ナビゲーションといわれる方法です。近年、乳がんなど様々な分野でこの見張りリンパ節(SN)を指標とした転移診断に関しての良好な成績が報告されていますが、口腔癌に関する臨床応用は、いまだ数施設において深索的に行われているにすぎません。

【論文】
1) 新谷 悟 口腔癌における Sentinel Node Navigation Surgery (SNNS) 昭和歯学会誌 27 141-145 2007
2) 新谷 悟, 中城公一, 日野聡史, 寺門永顕, 浜川裕之: 口腔癌におけるセンチネルリンパ節(SN)生検の臨床応用成績. 頭頸部癌, 31: 79-83, 2005.
3) 新谷 悟, 矢野淳也, 中城公一, 栢原浩彰, 寺門永顕, 中原裕二, 大西詔子, 三原真理子, 日野聡史, 浜川裕之:核医学的検出法によるセンチネルリンパ節生検実施までの経緯と現状. 日本口腔外科学会雑誌, 49: 257-263, 2003.
4) 中城公一, 新谷 悟, 大西詔子, 寺門永顕, 浜川裕之:口腔悪性腫瘍におけるセンチネルリンパ節微小転移の術中診断.頭頚部腫瘍学会雑誌, 29: 64-69, 2003.
5) 浜川裕之, 中城公一, 新谷 悟:口腔癌における頸部リンパ節微小転移の検出と臨床的意義 ーsentinel node navigation surgeryの確立に向けてー. G.I. Research, 11: 225-231, 2003.
温熱処理自家骨による低侵襲な口腔癌治療
下顎歯肉癌などにおいて温熱処理骨を用いる方法です。一般に顎骨を切除した後には、腰の骨や足の骨を持ってきて再建しますが、その場合には他の体の一部を使うことで侵襲も大きくなります。そこで、切り取った顎の骨から病変を取り除き、温熱処理することで腫瘍細胞を死滅させ、その顎骨を切り取った部分に戻して、顎の骨を再生させる方法です。
切り取った骨を戻すことで下顎骨の形が維持され患者さんの満足度も高く、最終的には金属のプレ-トも取り除くことが出来ます。入れ歯やインプラントによる治療も可能で、非常に優れた低侵襲治療です。

新聞などでも優れた治療法ということで紹介されました。


傷口の目立たない切開、筋を残し、術後の首の変形を最小限とする低侵襲治療
頸部のリンパ節に転移がみられた場合には、頸部郭清術という術式によって、転移リンパ節も含めて頸部の組織を取り去ります。この時に、一般には下図に示すAの皮膚切開を行いますが、この方法では術野は良いものの術後に縦の皮膚切開が瘢痕として目立つという欠点があります。Cの切開で行うと、手術は少し難しくなりますが、瘢痕が目立ちません。さらに、胸鎖乳突筋を温存することで術後の頸部の変形が最小限にすることが出来ます。



口腔癌(舌がん・歯肉がん・頬粘膜がん・口底がん・上顎がん)の先進治療
がん樹状細胞療法(Dendritic cell therapy)
昭和大学口腔外科では、患者さんのがん細胞が持っている特長(がん抗原)をターゲット(標的)として、そのがん細胞だけを狙い撃ちするように免疫力を高める最先端の免疫療法を行っています。
患者さんご自身のがん組織を利用した自己がん組織樹状細胞療法、人工的に作製したがん抗原(人工抗原)を利用した人工抗原樹状細胞療法、そして樹状細胞を患者様のがんの場所に直接注入する局所樹状細胞療法が行われます。
(保険適応外で、関連施設との共同での実施になります。)









